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慶應義塾大学東アジア研究所 現代中国研究センター

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研究グループ1:「政治体制の移行:一党支配体制変容の可能性」

中国において政治体制改革の必要性が説かれてから久しい。早くも1980年代には経済改革とともに政治改革の必要性が認識され、現実に80年代後半には具体的な計画がスタートした。しかし89年の天安門事件により、民主化のプロセスも完全に頓挫してしまった。冷戦終結とソ連解体の教訓を受けて、中国は社会主義市場経済を宣言し、市場経済へ向けた国内改革と国際経済システムへの参入を急いだ。これ以後、中国は海外からの直接投資をバックに成長路線に邁進したが、それは共産党の指導を強化した政治改革抜きの経済改革の推進であった。
経済成長一辺倒、競争一辺倒の路線はやがて90年代後半から国内の経済格差を生み出し始めた。それが21世紀に入ると、こうした問題が顕在化し、地域間、都市・農村間、社会階層間、産業間などに大きな格差が生まれ、各地で暴動が多発化するようになった。問題の核心は社会的弱者の声が政治に反映されない、つまり所得再分配のメカニズムが機能していないことであり、同時にすべての決定権限と重要な情報を掌握するのが共産党や政府であり、しかも内部で政治腐敗を深刻化させることで社会不満を増大させていることである。
そのため政治改革の必要性が中国において多くの人々の間で共有されているが、共産党一党支配による既得権益政治のなかで現実には進んでいない。今後、政治改革の必要はますます認識されようが、そのさい一党支配が変わりうる可能性はあるのであろうか。これが本グループの問題意識である。

研究計画(2007-12年)

本現代中国研究センターにおいては、2007年から2012年までの5年間のなかで、以下のような具体的な研究テーマ、研究・教育目標、活動内容を行いたいと考えている。

  1. 研究テーマ
    本研究グループは、中国共産党、全人代や人大を中心とした立法機関、国務院を中心とした行政機関などの制度機関分析をはじめ、各機関の政策決定、党軍関係、イデオロギー、中央・地方関係、少数民族問題、都市政治、農村政治などの機能的な側面を実証的に分析する。これらの検討の中から、中国における政治改革の可能性を探るとともに政治的ガバナンスの現状を解明する。
  2. 研究・教育目標
    政治の研究は絶えず流動的である。重要なことは日常的に起こる現象の分析ではなく、それらの個々の現象の背後にある体制や制度に詳細な分析を加え、より構造的な分析を試みることである。本研究グループは、定例研究会のなかで日常的な政治問題についても常時取り上げるが、重点はより政治構造の分析にある。メンバー間の連携と連絡を密にし、大学院生を研究活動に加えることで若手研究者の育成も同時に行いたい。また、中国および海外の研究機関との関係を強化し、国際的な研究ネットワークの一翼を担うよう努力する。研究成果は絶えず学会誌や学会などで公表するとともに、公開シンポジウムを開催することで社会還元を行いたい。
  3. 活動内容
    定例研究会を設置し、定期的に開催することで研究メンバー間の研究状況を確認しあう。政治状況が急激に変化した場合や突発的な事件が発生したときなどは、緊急に研究会を開催することもありうる。また大学院生チームを結成し、政治分析のための情報・資料収集と整理にあたってもらう。中国を中心に海外に赴き、学術調査と意見交換を年一回のペースで行う。さらに年一回、3プロジェクト合同のシンポジウムを開催し、お互いの研究の進展状況を確認するとともに、内外の研究者からの意見や批判を受けることで質の向上に努める。なお、研究の成果に関しては最終的に図書として刊行することを目指す。



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