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慶應義塾大学東アジア研究所 現代中国研究センター

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プロジェクト1:「中国政治における台湾要因の検証」

(研究責任者:高橋祐三)

本プロジェクトの目的は、台湾について中国が「中国の一地方」あるいは「国内問題」と、その存在を限定的に規定しつつも、現実には国内諸分野・対外政策において様々な影響をもたらしていることに着目し、「中国政治における台湾要因の検証」との統一テーマの下、参加メンバーがそれぞれ国家構想、中央・地方関係、軍建設、政党関係などの側面から、中国政治と両岸関係に対する新たな分析視覚を提起することである。 従来、台湾研究は主として台湾研究者によって担われてきたが、本プロジェクトでは台湾研究を研究の主領域としていなかった研究者がメンバーの大半を占め、自らの主要研究領域における「台湾インパクト」を分析する。つまり、台湾要因が中国の国内政治諸分野へ与えた影響を個別に検証する点に、本プロジェクトの意義がある。 中国共産党による国家建設の最重要課題は、2つの時期において変質したと考えることが可能かと思われる。それは1950~70年代には共産党政権の確立であり、80年代以降では経済発展の実現と民主化の模索である。これらに対して、台湾の動向がいかなる意味を持ち、作用を与えたのかに関して、各時期2名のメンバーが論考を提出する。 プロジェクト活動は論文執筆にとどまらず、中台間の各種交流実態と、近年活発な学術交流による学術理論の相互作用を調査、紹介することも主眼とする。プロジェクト・チームが厦門大学台湾研究院を訪問し、現地研究者・実務者との意見交換や諸機関での資料収集を行なう(現在、同院長・劉国深教授等に調査協力を依頼中)。単独の研究者による調査以上に網羅的かつ精度の高い研究成果が期待される。



◆活動報告(準備会合)◆

【第1回準備会合】

 日 時:2010年11月12日(金)17:30~19:30

 場 所:慶應義塾大学三田キャンパス  東アジア研究所第2共同研究室

 慶應義塾東アジア研究所現代中国研究センター2011年度研究プロジェクト申請内容に関する話し合い。


【第2回準備会合】

 日 時:2011年2月21日(月)16:00~18:00

 場 所:慶應義塾大学三田キャンパス 東アジア研究所第1共同研究室

 ①プロジェクト年間スケジュール立案

 ②研究会・出張・学会報告、ワーキングペーパー等プロジェクト活動内容詳細の確認

 ③アモイ研究出張手配進捗状況報告


◆活動報告1◆

【第1回研究報告会】

 日 時:2011年4月16日(土)17:00-20:00

 場 所:慶應義塾大学日吉キャンパス来往舎1階 教員談話室 会議室

 報告者:

 ①高橋祐三 (東海大学)

  「2005年以降の『中国モデル』の展開と中国の政党理論」

 ②磯部 靖 (慶應義塾大学)

  「改革・開放政策の推進と台湾問題 ― 福建省の指導者の役割についての考察を中心として」

 ③福田 円 (国士舘大学)

  「1950年代半ばの対台湾統一戦線工作と民主諸党派の役割に関する予備的考察」

 ④山口信治 (防衛研究所)

  「第二次台湾海峡危機と大躍進運動」

 8月の中国での学術交流および本プロジェクトによる11月の学会における企画部会での研究成果報告を目指して、全員がそれぞれレジュメ3枚前後にまとめた研究報告を行なった。その他、中国での学術交流に関する中国側との調整・進捗状況と、学会部会への申請状況が確認された。


◆活動報告2◆

【第1回成果報告】

 日 時:2011年5月21日(土)

 場 所:獨協大学 2011年度アジア政経学会東日本大会自由論題報告

 報告者:高橋祐三 (東海大学)「『中国モデル』と中国の政党制度理論」 

 メンバーによる学会報告の第1弾を高橋が行なった。「中国モデル」の概要を、近年出版された中国人による学術研究書から検証し、それが特定の理論分野への波及の有無を分析した。本報告では中国の政党理論に着目したが、「中国モデル」が党・政府見解や学術理論にまで影響を及ぼしたこと形跡は認められなかった。


◆活動報告3◆

【第2回研究報告会】

 日 時:2011年6月25日(土)10:00~13:00

 場 所:国士舘大学世田谷キャンパス34号館2階 会議室A

 アモイ出張での研究報告準備。全員がA4判原稿2枚とパワーポイントを作成。

 ①高橋祐三 (東海大学)

  「台湾の政権交代が中国の政党理論に与えた影響」

 ②磯部 靖 (慶應義塾大学)

  「日本における現代中国研究 ― 代表的な研究者とその著書の紹介を中心として」

 ③福田 円 (国士舘大学)

  「台湾解放宣伝工作における前線としての福建省(1954-1957 ― 内部参考資料の分析を中心に」

 ④山口信治 (防衛研究所)

  「1950年代の台湾問題と中国国内政治」

 4月の第1回研究報告会での報告内容から発展させた研究報告をメンバー全員が行なった。メンバーの相互理解を深めることを目的に、会場は各メンバーの所属大学を持ち回りで使った。研究報告以外に、5月の高橋による学会報告の報告や8月の中国での学術交流に関する手配状況、11月の学会報告の役割分担などが確認された。


◆活動報告4◆

【グループ会議:中国での学術交流の準備】

 日 時:2011年7月28日(木)

 場 所:東海大学高輪台キャンパス

 全員が集まり、8月の中国での学術交流の準備に関する進捗状況が確認された。具体的には、航空券の配布、日程調整、厦門大学台湾研究院とのミニシンポジウムの中国側参加者、ミニシンポジウムで報告する際の中国語原稿・パワーポイント原稿、中国側への謝礼支払い、金門島での調査計画など。


◆活動報告5◆

【国際ミニシンポジウム・調査】

 日 時:2011年8月9日(火)~13日(土)

 場 所:中国厦門大学台湾研究院

 ①高橋祐三 (東海大学)

  「台湾政权交替对中国统治理论的影响」

 ②磯部 靖 (慶應義塾大学)

  「日本的现代中国研究 ― 以介绍代表性的研究者以及著作为中心」

 ③福田 円 (国士舘大学)

  「福建前线的解放台湾宣传工作1954-57) ― 以《内部参考》的分析为中心」

 ④山口信治 (防衛研究所)

  「20世纪50年代的台湾问题与中国国内政治」

 10日に厦門大学台湾研究院と共催のミニシンポジウムを開催、中国側は11名が参加した。日本側4名の中国語による報告に対して中国側からコメントが寄せられた他、日中関係、大学教育などに関する幅広い意見交換がなされた。11日には南京条約(1842年)による租界であるコロンス島(鼓浪嶼)を視察、12日は厦門から台湾政府支配地域である金門島へ渡航、小三通の現状と、金門島における国民党統治および両岸における軍事的対峙の情況を調査した。


◆活動報告6◆

【学会口頭報告】

 日 時:2011年11月13日(日)

 場 所:つくば国際会議場 日本国際政治学会企画部会「中国政治における台湾要因の検証」

  代 表:高橋祐三 (東海大学)、司 会:磯部 靖 (慶應義塾大学)

 ①福田 円 (国士舘大学)

  「福建前線における『台湾解放』(1954-1957)」

 ②山口信治 (防衛研究所)

  「1950年代の台湾問題と中国国内政治 ― 対外関係の国内政治への影響」

  討論者:浅野 亮 (同志社大学)、中村元哉 (津田塾大学)

 本研究プロジェクトの研究成果を学会で報告すべく、日本国際政治学会2011年度全国大会で企画部会を申請し、4名の総動員体制で部会開催にあたった。報告内容と討論者によるコメントは学会ニューズレターに要旨が掲載されている。なお同大会で本プロジェクトメンバーの福田が学会奨励賞を受賞した。


◆活動報告7◆

【研究報告会】

 日 時:2011年11月17日(木)

 場 所:東海大学 文明研究所2011年度第4回研究会

 報告者:高橋祐三 (東海大学)「台湾における政党政治理論研究」

 本プロジェクトは東海大学文明研究所からも助成金を受けて研究活動が実施されたことから、同研究所での研究会で、プロジェクト全体の活動報告および高橋個人の研究報告を行なった。今回の研究報告は、8月の中国での学術交流において得た資料を使った研究成果である。


◆活動報告8◆

【論文発表】

日 時:2012年3月

雑 誌:東海大学文明研究所『文明』第14号、2012年。

  ①高橋祐三 (東海大学)

   「中国における台湾政党政治理論研究」

  ②磯部 靖 (慶應義塾大学)

   「現代中国の中央・地方関係における台湾要因

    ― 改革・開放期における福建省の指導者の役割に関する考察を中心として」

  ③福田 円 (国士舘大学)

   「史料紹介 ― 中華人民共和国政治史研究における『内部参考』の利用」

  ④山口信治 (防衛研究所)

   「1950年代の中国における対金門島作戦」

 本プロジェクトが助成金を受けた東海大学文明研究所の紀要『文明』に、全員が論文を寄稿した。これで本プロジェクトは、グループ内の研究報告会の積み重ねと、海外での外国語による成果報告、海外での調査活動、国内での学会報告、論文発表に全員が携わり、一定の研究成果の完成を示すことができた。



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